童話 おさかなのとんだ日 4

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トビウオのお兄さんは、誰になにをいわれてもあまり気にせず、一生懸命自分の言いたい事を話終えて、赤いドレスのウミウシのリーダーに

お礼をいいました。

「ありがとう。そういうわけで、明日の満月の夜皆と飛べるといいですね。ぜひたのしみましょう。こんなことはめったにありませんよ」

話がおわるとすぐに舞踏会は始まりました。軽くクイックダンスからです。

踊り始めると、ゆっくり海をただよっていたウミウシの皆は活発におどりはじめます。色とりどりの七色の布が、とびかっているように

目まぐるしく、ひかりの帯のように動いていて、うっとりとしてしまいます。

テーブルサンゴの上はきらびやかな舞台となって月の光が差し込みその場は夢の中のようでした。明日、満月になるので

その光も大きく満月と間違えるくらいにきれいでした。

そのときでした。かさごのおばさんが、トビウオのお兄さんを探してきました。

「あ、おばさん、もう全身美容はおわったの?」

「そうそう、今終わったところよ。どお、綺麗になったでしょ?」

「あ~そういえばあかぬけして、おばさんなんて言ったら失礼だよね。淑女の熟女!(しゅくじょのじゅくじょ)?」

「まあ、熟女はよけいよ! いい知らせをおしえてあげようときたのに」

「ごめんごめん。失礼しました」

「いいよ、どうせ、これ以上はきれいにならないんだから。 それより外洋から帰ってきたカツオが通るってきいたわ」

「そう、ありがとう。カツオが通るってことは次くらいに大きなマンタがとおるかもしれないってことだね。そうするともうじきだ」

皆は時を忘れておどりまくっていますが、疲れるので休憩があります。

赤い衣裳のウミウシが何の用事があるのかきました。

「あ、さっきはありがとう。おかげで言いたい事が全ていえたよ」

「トビウオのお兄さん、よかったわね。ところでちょっとしたお願いがあってきたの」

「どうしたの?」

「この休憩が終わったらワルツがはじまるわ。一緒におどってくださる?」

(えっ!?)まさか・・ウミウシに踊って、とたのまれるなんて。しかも自分は踊りはとてもニガテなのでした。

「あなたの衣(ころも)のようなもの。スカーフのような何気ないひらひらがとてもすてきよ!」

「えっ?僕の事をほめてくれるの」

「もちろんよ。皆(人間だって)ちょっとした事をすると、おしゃれなのよね」

普通の魚ね、と言っていたウミウシがほめてくれて、おまけに踊ってくれとは・・・。いやとはいえませんが・・・。

「ぼくは・・あのう・・踊りは下手ですよ。いやおどれません」

と、しりごみしていましたが、「大丈夫、いいからいいから」と無理やりつれていかれました。

(きゃあ、大変、ぼくは踊れない!)

ウミウシは紅いひらひらを自由に動かせて、トビウオのおにいさんをグイグイひっぱります。ただ尾やヒレをバタバタさせて

必死でした。それが誰かにわらわれていることなどにも気がつかないくらいでした。

けれども人間ではないので足をふむ、とかぶつかるということはありません。

たてに、よこに、上に下に、よくもまあ、これだけ踊れるものだ、とトビウオのお兄さんは圧倒されています。

疲れはその時わからないのですが、何かとても眠くなってきました。

「たいへんだ~みなさん、いよいよオニイトマキエイ(マンタのこと)がこちらにやってくるそうです。お開きにしまうしょ~」

白いからだのぽってり太った会長は大声で号令をかけました。

赤いウミウシのリーダーもさけびます。

「では~これで舞踏会は終わりです。また来月ね。トビウオのお兄さん、ありがとう~」

と大急ぎで皆逃げるようにちらばっていきました。トビウオのお兄さんは、ねむくてしかたがないけれど、これからが本番なので

閉じてしまいそうな眼を必死にあけていました。

ウミウシは小さいので間違って食べられそうになったら怖いのでさっさとかえります。マンタはいよいよ勢いを付けてやってきました。

子魚はあわててかくれなければなりません。トビウオのお兄さんは眠い目をこすりながら、リーダーの傷もようのマンタを

必死でさがしました。リーダーというくらいなのできっと浅瀬にいるはずです。

そして見つけました。背中の傷がちらっとみえました。

「あっ、あのマンタだ!」しかし、マンタはお腹が空いて食べるのに夢中で気がつきません。

「さあ。やっと食事にありつける!たっぷりと頂いて、休憩して出発することにしよう!」

マンタは大きいので、ほかの魚におそわれることはまずありません。

マンタは悠々としていて、トビウオのお兄さんの事など見えもしないようなので、さてどうしたものか‥早くしなければ・・・と

トビウオのお兄さんはそっと、後ろのほうからちかづきおどろかさないように眼の前にでていきました。

「やあ、こんばんは。マンタのおじさん!ぼくはおじいさんにきいたのですが・・」

「おや、トビウオ君、何だね?食事中なんだけど」

「ごめんなさい。ぼくのお爺さんを知りませんか?お友達ってきいたんですけど」

「ん?そういえばしってるさ。ぼくの事を傷も要ようのマンタ、なんていっているけど。そうそう思いだしたよ」

「何か約束しなかった?」

「したした、十年に一回、お魚が飛べる日があるってことだろう。その方法を孫の君におしえるってこと、たしかにたのまれたね」

「出会えてよかった!もうその日が明日夜に迫っているので、見つけられなかったらどうしよう、とおもっていました」

とにかく出会える事が奇跡なようなものです。そのことにトビウオのお兄さんは感動していました。

「お願いです教えてください!」

「ああ、いいよ。あれはね」傷模様のマンタはおしえてくれることになりました。

続く




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