時代小説 雪しぐれ 14

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光行の次男、光輝は、結局大きな病院に紹介されて行くことになった。キクは母が亡くなった直後でもあるため付き添いは

光行が行くことになった。

結果は、癲癇であるという衝撃的なものであった。発作が起きその瞬間は意識がなく、しばらく痙攣が続くという重篤な病であった。

そんなことになるとは思いもしなかった光行は今までの幸せな生活が一度に崩れていくような気持ちになった。

次男の将来を思うと、おちこんでしまう。しかし現実はかわらない。

そんな光行を遠眼でみていて、志乃は光行の落ち込んでいる姿をみなければならなかった。

励ます事も手伝うこともできない。商売は相変わらずいそがしいので、正三もサチも自分の仕事以外の事もしなければならない。

志乃もできるだけの事はした。そして、季節は夏へと進んでいった。

あれ以来キクは度々光輝を連れて病院通い。店の雰囲気もよくはなかった。

志乃もできるだけ明るく振舞おうとしても、一人浮いた状態も変なので感情はおしころしていた。

志乃はもまた悩みを抱えていた。

このままどうなるのか・・。と。どうにもならないことが分かっていて、この恋は当然みのらないのははっきりしている。

志乃はもう忘れてしまおう、と思った。

山本乾物店では、光輝の病院通いにいくキクにも微妙な雰囲気があった。

キクは由緒正しい家に育ちお嬢様として育ったので、なかなかこういう不幸な事にはついていく事ができない。

周囲はキクの仕事を減らして、気を使っていたが、当人は精神的に参ってしまってふさぎこんでいた。

あれだけの建気丈さは何処へいったのか。キクにとっても大きな試練で乗り越えなければならい。

それなのに寝こんでしまった。

光輝の病院はサチはいくようになった。当然サチの仕事は志乃に回ってくる。

光行や正造、従業員の世話や食事の世話、子供の世話などである。

家族の食事がすむと、正造やサチ、良子、あや、志乃の食事がはじまる。皆なぜか無口になっていて黙々と食事をした。

そんな雰囲気の日が続いた。

今日はサチがいなかった。まだ病院から帰っていないようだ。

いつもの朝食が終わると、珍しく正造が声をかけてきた。

「うーん、大変だなあ、奥様がこれだけ長く寝こんだら旦那様も・・・」

「そうですねえ。早くなおってもらわないと・・・」

「ご馳走様!」二人の子供たちは食事が終わったので自分の部屋にもどったので片付けはじめた。

しばらくすると、勝は母に告げに来た。

「母ちゃん、誰かきてるよ」

「はーい」ととりあえず返事はしたものの、誰であるのかは予想もつかない。

自分宛には客などくるわけもない。

志乃は自分の部屋に戻ると、なんとそこに立っていたのは問題の田島ではないか!

忘れていた頃に現れる、不適な笑いを浮かべて・・一体何の用事があるというのか。

「ちょっとばかり話があってね」

「今仕事中です」

「あんまり手間はとらせないから。あがらせてもらっていいかな?」

「ここは私の家ではないので。こまります。まだ仕事があります」

「そうか・・」

志乃はきっぱりと断った。何とか早く帰ってほしい。

その時偶然に光行が庭木の向こう側から田島の姿をとらえていた。そして早足でこちらへ来た。

こんな奥までは滅多に来ない光行であった。

「おや、田島さんではないですか?何か御用でしたら表の方から来てくだされば・・・」

「ああ、すまん。ちょっと志乃さんに用事があって」

その目は不適さがあって光行を圧倒させるような眼であった。

「こんな裏からこまりますね。玄関から来てくださればわたしが用件をお伺いしますよ」

光行は暗にけん制しているのに開いてもひるまない。しかし、志乃の今後のためにもまけてはいられない。

「田島さん、どうぞ表から来てください。お茶でも・・・」

「・・・」

田島はそれ以上長居はしなかった。志乃はほっとしたけれど、これからの事を思うと憂鬱であった。

こんな風に勝手口から来られても迷惑なのである。

「困った人だ。一体どういうつもりなのか、志乃さんも相手にしにない方がいい」

「はい・・・」

「今度、勝手口に鍵でもつけるか。いや、志乃さんは心配しないでいい」

「はい・・・」

勿論、志乃の気持ちはわかっていた。志乃の悲しい顔を見ると光行も辛いのである。

続く