時代小説 雪しぐれ 22

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22
光行は光男が家を出ることに反対はしなかった。男の子であるし、一度色々と社会勉強したほうがいいかもしれないと思っていた。

心の中では親に止めてほしいと願っていたかもしれないが、そうもいくまい。自分からいいだして、自分で選んだ道だから

嫌ならやかましくいわないでもかえってくるだろう。

一緒に住んで問題が起きるかもしれない。志乃はどういっていいかもわからないのでとにかく堪えるのみであった。

あまりあっさりと光行も何も言わないので、サチも拍子抜けしていた。

その夜、光行は話があるといった。内容は驚くべきことだった。

「以前昔の話になるが・・・」

そう言って静かに話出した。志乃の住んでいた家がこわされたことがあった。結局わからないままだった。

それが田島実が犯人だというのだ。それだけではない、今回の肩をきられたのも田島だと光行はいうのだ。

志乃にとっては驚きであった。しかも自分で言ったらしい。

志乃はまさかとはおもってはいたが、光行が言うのだから本当の事だろう。

それなら警察に言ったらいいのに。言わないという。 勿論乾物の取引は辞めている。

今警察に言えば、一つもいい事はない、という。商売の邪魔になるし、自分も事情を聴かれる。見せたくない腹のうちも見られる。

今さら思い出したくもない事が、志乃の脳裏をかすめた。

やはり田島実は恐ろしい何か秘めた考えをもっている。

「いや、もう心配することはない。多分もう悪い事はしないと思う」

「本当?。そんなことは信じられない。それよりか、光男さんがでていったのに心配はないのですか?」

「ああ、三日もしたら帰ってくる、そんな性格だ」

光行はのんびりと構えている。性格は親がよく知っていると思っているのだろうか。不安がないといったらそれはないことはないが、

いまさら言えない。志乃はそこまで心配しなくてもいいのだが、気になる。

「ではお話はうかがいましたのでこれでかえります」

光行は急に志乃の手をつかんでひきとめた。

「明日から突然で悪いけれど、よろしく頼む]それは待ちに待った瞬間でもあった。思えばこの家に来るまだ前から

のことをおもえば時間が経ちすぎてしまった。二人はもう若くはない。けれども、難題に立ち向かう勇気や気概は十分ある。

そのころ、光男は友人宅の二階でくつろいでいた。違う町ではあるが、親が下駄屋を営む商店街の一角にある家である。

「色々迷惑をかけてしまうが、恩に着るよ」

「なあに、いいんだ」友人の名前は茂という。親は昔から代々下駄屋を営む商売屋だ。

親は気さくなのだが、職人気質で自分の意見はまげない頑固おやじでもある。そのため母親とはいつもいざこざがたえない。

お酒もよくのんでぐちぐちいう。

長年の親同志の付き合いもあり、光男は歓迎されていた。しかし、いままでに泊まったことはない。

光男は長年の友人といえども、個々の家族はだいたいの感じではわかっていたが、想像以外の事もあった。

食事もごちそうになり、お風呂ももらって、二人は機嫌よくねてしまったが、突然の物音と、声で驚いて光男は起きた。

(うーん、眠いのに何の音?)

「またか・・・」

「又か?って何?」

茂は眼をこすりながらまた眠ってしまった。

今度は大きな怒鳴り声が聞こえた。 階下には茂の両親がいるだけで妹や弟は別棟に寝ていた。

明らかに夫婦喧嘩である。けれどもそこらへんの喧嘩ではない。ドスンと何かの落ちる音、何かを投げつけるような音、

それにののしる声。

光男はこんな激しい喧嘩は見たことも聞いたこともない。何か恐ろしい事がはじまっていないか、布団にしがみついていた。

当分眠れそうもない派手な喧嘩だ。茂は文句も言わず黙っている。それも不思議だった。

いつもの事でなれているのか、それともあきらめているのか。

暫くすると、それからは物音がしなくなった。

(一体どうなっているんだろう、この家族は・・)

茂が再び寝ても光男は色々想像して眠れなかった。朝まで起きていたのだろうか、ついうとうととして少しは寝たようだった。

「学校へいくぞ!早くおきろ!」

茂の声でびっくりして光男は目が覚めた。あれからぐっすり寝ていたらしい。

朝食は何事もなく当たり前に用意されてあった。夕べの騒ぎは誰も一言も言わない。何か微妙な雰囲気は他人の家で世話になるという事の

何とも言えない気分をあじわってしまった。

家族にも迷惑だろうし、「ゆっくりしなさいね」と言ってくれる茂の母に対してもやはり気をつかってしまう。

自分の家も商売をしているのでやはり家族にも気を遣うという事を光男はしってしまった。

もやもやとした訳の分からない気持ちが光男の考えを変えてしまった。

学校につくと思わず茂にいった。

「迷惑かけてしまって・・・ありがとう。ぼくはやっぱり今夜かえるよ」

続く
















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