時代小説 雪しぐれ  11

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そろそろ桜が咲き始めている。毎年のように山本商店は、近所の荒物屋のお店の人と一緒に花見に行くことになっていたが、当然のこと

ながら中止になった。自分の山にいくのだが、山火事のためお花見はできないからだ。

このころから、光行は自分でなぜかはわからないのだが、キクの事を疎ましく思うようになった。

今までそんなことは考えもしなかった。やはり志乃がきたせいなのか・・・。

キクもなぜか光行の事を遠い存在のように思えた。

大きな溝ができて、それが深まってゆく、そんなことをお互いに感じながら光行も複雑な気持ちですごしていた。

キクは勿論母シゲノの面倒もよく見てくれた。そして感謝はしていた。

(が、この時代は浮気や駆け落ちなどできないので)胸の内は苦しかった。姑がなくなったからといって、急に心変わりをするのも・・と光行

自分の勝手な気持ちにも苦しんでいた。

キクは、長男の光輝(小学3年生、次男の光輝(二年生)光雄(6歳)が皆学校へいきだしたので忙しかった。

志乃の息子勝も一年生の新学期を迎えていたので、志乃も超忙しく過ごし何を考えている暇もなかった。

そんなある日。

「大変だ~」と正造が慌てて帰宅した。

「どうしたんだね。騒々しい」

「それが・・・今旦那様にいわれたものを配達してきたのですが、途中で知り合いに会って、話を聞いたことですが・・。

志乃さんの家が壊されたというんでみにいってっきたら・・・」

「壊された、どう言うこと?」

光行は仕事の手を休めて正造をみた。 志乃の家が壊された?一体何なのかのみこめなかった。

志乃の家は主人が大工だったので、自分の家を長い間かけて創った。正造は知り合いに聞いて確かめに行った。

たしかにオノや、クワなどを使ったのか、滅茶苦茶に壊れて奥まで見えた。なぜ壊さなければならないのか。あたりは壊れたものが

散乱していた。

誰が何のために・・・・。とりあえず、志乃には知らせなければ、と慌てて帰ってきた、ということだった。

志乃は正造の言葉が信じられず、落ち着いてきいていたが、噓でもない話であった。

とりあえず一旦見るために帰ることになった。光行はキクの手前もあるし自分はいけないので正造に一緒に行ってくれるよう頼んだ。

一人では心細いだろうとの気遣いであった。

家につくと、志乃は茫然とした。玄関は目も当てられない‥一体誰が・・・。心あてもなく、恨まれることもなかった。

住むことはできないのか。こんなに村のはずれにいつもは誰もとおらないはずなのに。

警察に届けたとしても、きっと目撃者もいないと思われるので、届けても仕方がないと思った。

そして、勝と剛にはどう伝えたらいいのか。

悪い事をするもんだ。何のために・・もう帰っても修理でもしない限りは住むことはできない。

「酷い事を何のためにするんだろう、志乃さん、とりあえず届けた方がいい」

「ありがとう、本当にいつも正造さんには迷惑ばかり・・」

「うーん、いいんだけどね。なにかのいやがらせかな?こういことは泥棒もしないよなあ」

そういいながらとりあえず、散乱したものを片側によせたりした。

正造も真剣に考えてくれていた。犯人がつかまるという保証もないが、とりあえず、届だけは出しておこうと警察にもよった。

(もう…家にかえってもしばらく住めない・・)わびしい思いだけがかけめぐる。


志乃は、雪の中光行にであった時の事を思いだした。冷たい感触の雪なのに温かなまなざしを見た。いつまでも後ろ姿をみおくって

いた自分。誰がみてくれなくてもいい。あの人は必ずみていてくれる。それが大きな安堵感であった。

(そうだ、あの日であって、私達親子は助けられた。家が壊れようが、何が起きても構わない。私はこの地獄から必ず這い上がってみせる。

泣くまい。強く生きなければ)

「ねえ、正造さん、もう帰りましょ。見て立っていても直りはなしないから」

「そうですね」

二人は警察に届けを出しによった。

「一応はさがしますがね。目撃者がいないと簡単にはみつからないかもしれませんよ。一応は受け付けはしましたが・・」

「おねがいします。」

何という言い方だろうか、親切心のカケラもない高圧的なことばであった。

それ以上警察にかかわることもいやなので早々に引き上げた。光行もキクも皆心配してくれていた。

「どうだった?」

「どうもこうも、滅茶苦茶だよ、旦那様」

志乃の代わりに正造が答えた。

「一応、警察もよってきましたがね。何ていうか・・・つれない返事でね。誰もための何のための警察かはわからないよ」

正造もかなり立腹しているのが見れた。

「そうか…まあ、力をおとさないように。しばらく様子を見てまた考えよう」

聞いていたキクは(何?考えるって、どういうこと・・・。直してあげるとでもいうの?何でそこまで面倒みるの?)

光行は、自分が直せたらいいが、キクの手前もあるしそれは言えなかった。

今すぐにもできないし、やはり商売優先を考えなければならない立場でもあった。

志乃は子供たちに言い聞かせた。

「勝、剛史、大丈夫だよ、母さんがなんとかするからね」

言ったものの簡単なことではない。二人は泣きたい気持ちをぐっとこらえていた。

志乃も自分では出来ないことなので、とりあえずは玄関に大きな布を店で借りて覆っておくことにした。

続く






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この記事へのコメント

2020年05月16日 09:29
誰が、何のために?想像してます。
秋月夕香~としさんへ
2020年05月16日 11:56
こんにちは。コメントありがとうございます。

この犯人は物語の一番最後までわかりません。

いつもありがとうございます。まだまだづきますので

またよろしくお願いします~♫

(ヒントは物語に出てくる人物です)